都内のあるライブハウスで行われるロックバンドのライブ。 そのステージを見つめるひとりの少女が、最後の曲を待たず店を出た。
地上に出てため息をつく彼女の後ろから、追いかけて出てきた別の少女が声をかける。
「カミナ……ねぇ、もう音楽はやらないの?」
「……リノちゃん、私はもう、いいんだ……」
そう言って目をそらすカミナに、リノはチケットを差し出した。
「来月、ライブやるんだ。よかったら……」
「……もうやめて!」
自分でも意識せず、大きな声を出したカミナは、硬直したリノの前から逃げるように立ち去った。
「どうせ音楽なんて……何の役にも立たないし……」
夜の街を歩きながら、カミナはそう呟く。
――その時、カミナの目の前をなにか、白いものが横切った。
「……? 動物……?」
その白い「動物」はふらふらと空中を漂い、車道の方へと出ていく。
「ちょ、ちょっと、危ない……!」
カミナはその動物を追い――そこへ、4tトラックのヘッドライトが猛スピードで近づいてきた――
* * *
目を開けると、そこは見たこともない不思議な空間で、上下も左右もわからずカミナは宙を漂っていた。
「迷惑をかけて申し訳ないピク」
ふと、聞こえてきた声の方を向けば、そこにはさきほどの白い動物が浮いていた。
「喋った……?」
「それも僕の能力ピク」
カミナは戸惑いながら、周りを見渡す。
「わたし、死んじゃった……?」
「そんなことはないピク。ちゃんと元の生活に戻してあげるピク。だけど……」
白い動物は、カミナの顔の前にまわり、その目を見つめ、言った。
「カミナ、君の音楽で世界を変えて欲しいピク!」――