アロルヤォーグの王都・ハーマッツ。
その外れに建てられた巨大な王立音楽堂が、ドーム状の屋根を開き、ステージが現れる。集まった群衆が歓声を上げた。
鳴り始める音楽、色とりどりの照明が激しく動き、そしてセンターにスポットライトがあたる。そこには、100年振りに人前に現れたレジェンド級の伝子騎器《ナイトガジェット》・DX-7。
会場の外で警備に当たっていた若き騎士・リーパスは、遠目にその情景を見やる。
……その時、不意に空間が歪んだ。
「……なんだ? こいつら!?」
そして黒い光の中から現れたのは、異形のモンスターたち!
「魔獣だ!」
「どうして……結界はどうなってる!?」
応戦する騎士団! それぞれ手持ちの伝子騎機《ナイトガジェット》を発動させる!
その刃で魔獣の身体を斬り裂き、そしてダイヤルとフェーダーを操作してガジェットから炎を、電撃を、魔力の奔流を迸らせて、魔獣を撃退していく騎士たち!
「……? 妙だな……?」
伝子騎機《ナイトガジェット》「EMX」の蒼い機体から、エネルギーの刃を繰り出しつつ、その身のこなしで魔獣を翻弄するリーパス。しかし、その脳裏には疑問が浮かんでいた。魔獣の「特性」がバラバラだ。統率されていない……?
「陽動か……!」
そう気がついたリーパスは、コンサートホールの中へと駆けだした……!
* * *
――音楽堂の中。
ステージの上、聖楽団のメンバーが楽器を構える中、突如としてそこに現れたのは……双頭の合成魔獣・キマイラ!
阿鼻叫喚となるステージ、そして逃げ惑うステージしたの観客たち。そこへ、キマイラの片方の頭から放たれた炎の息吹が炸裂し、爆発する……!
「DX-7よ……!」
楽団のセンターでDX-7を構えていた女性団員――聖楽団のエースである――がDX-7の鍵盤を操作する、が……
「……動かない……?」
DX-7はその力を発動せず、沈黙するのみ。そこへ、キマイラが襲いかかる!
* * *
「なんなの……一体これ、なんなの!?」
逃げ惑う人々の只中に、カミナがいた。見慣れない景色、亜人種が混じる周囲の人々、そして目の前に立ちはだかるモンスターと、それに対抗する人々。
そこへ、駆けつけたリーパス。ぼうっと立ちつくすカミナに気が付き、その肩を掴む。
「おいあんた! 早く逃げ……」
……と、そこへ炸裂する炎の息吹!
「きゃああああっ!」
吹き飛ばされるカミナとリーパス。そしてカミナが顔を上げると、目の前に立ちはだかるキマイラ……!
「くそっ……!」
リーパスがEMXを構え、キマイラに斬りかかる! しかし、その斬撃も、青白く光るエネルギー波も、魔獣には通用しない!
暴れるキマイラ、そして破壊され吹き飛ぶステージ! 巻き込まれ吹き飛ぶリーパス!
「……あの子……! 助けなきゃ……! あのバケモノをなんとか……!」
そう呟いて立ち上がろうとするカミナ。
……その時、なにかが呼ぶ声が、カミナの耳に届く。ふとそちらを見ると、そこには、レジェンド級伝子騎機《ナイトガジェット》、DX-7が……
「……キーボード……? わたしを、呼んでる……?」
DX-7を手に取るカミナ。その瞬間、DX-7のインジケーターランプに光が灯る!
「……あんた、それを使えるのか……!?」驚くリーパス。そして、立ち上がりDX-7を構えるカミナ!
「伝わる……このキーボードがして欲しいこと。今、この子が奏でたい音!」
伝子騎機《ナイトガジェット》・DX-7を構えたカミナが、双頭のキマイラと対峙する……!!