「……君ともあろう者が、随分と手こずっているようだね、ロルガ」
暗い部屋を仕切るように掲げられた薄いベールの向こうから、艶やかな声が響いた。
ロルガ――王都を襲撃し、リーパスと戦いを演じた蒼い鎧の男は黙って床に跪いている。
「もっとも、神器のみならず使い手まで現れるとは、この僕にも予想できなかった」
「……はっ……」
「君を責めるつもりはないよ。むしろ面白くなったと思っていてね」
「……というと?」
ベールの向こう側で、影が立ち上がる。優美な痩身の男の姿だ。
「神器を弾きこなす奏者《プレイヤー》……素敵じゃないか。あの神器『DX-7』と合わせて我が手にしたら、もっと素敵だと思わないか?」
「御意……」
ロルガは立ち上がり、怪しげな装飾の光る部屋を後にする。「魔王」の意向は理解した。あとは行動に移すのみ。
* * *
立ち寄った村を脅かすミノタウロスを退治したカミナたち一行は、再び音楽堂型飛空挺《ワークステーション》で西の果てへと向かう。
「この調子で休み休み飛んでたらどれくらいかかるの? その西の賢者だかって人のところまで」
「だいたい5日ってところかな」
剣技とEMXの力でミノタウロスを倒してみせたリーパスがカミナに答える。
「西の賢者ってのは……王が代わるときにだけ姿を現すらしくて、もう500年くらい生きてるっていうんだ。行っても会ってくれなかったりしてな」
「えええ、そんな……」
そんな話をしながら空の旅をするカミナたちの姿を、遠くから見つめる者があった。
「……あの未熟な騎士君が護衛か。なんとも頼りないな」
飛空挺の甲板から双眼鏡を覗き、ロルガは口元を歪ませる。
「行くか……飛竜《ワイバーン》部隊の準備はどうか!」
兵士のひとりがそれに答えるのを聞き、ロルガは笑った。